猛龍笑將

渋谷警察署を拠点に勤務する刑事を主人公とするラブコメディが、トレンディドラマの先駆けとして知られる作品です。出演者の中で大半が刑事を演じていますが、実際の事件シーンは少なく、コンパやナンパの場面が多く描かれています。登場人物たちは高級ブランドの服を身に纏い、渋谷や他の魅力的な店舗が頻繁に登場し、そのファッションやライフスタイルがメインテーマとなっています。このような要素がトレンディドラマの元祖とされる理由です。

人気俳優の陣内孝則や柳葉敏郎に加え、三上博史の女性人気が一躍高まりました。彼の主演ドラマが多く制作され、「トレンディドラマのエース」と称されるようになりました。また、これまで「スタイルの良さが鼻に付く」といった理由で女性からの反感を買い、雑誌の「女性が嫌うタレント」ランキングに常に上位に名を連ねていた浅野ゆう子も、この作品でシングルマザーを演じ、一躍女性からの共感を集めました。これが同年の7-9月期に放送された『抱きしめたい!』での浅野の人気にも繋がりました。浅野以外にも多数のアイドル女優や著名俳優が出演し、大きな話題を呼びました。

この作品は、東京ラブストーリーや101回目のプロポーズなどで「ドラマ黄金時代」を築いた大多亮がプロデュースした初作品でもあります。29歳の若さでプロデューサーに抜擢された大多は、当時20代のプロデューサーは非常に稀でした。TBSが「ドラマ王国」で若者のドラマ離れが叫ばれていた中、フジテレビもドラマ部門で大幅な遅れをとっており、この大胆な挑戦が可能となりました。大多はスタッフやキャストとも若手を積極的に起用し、若者向けの恋愛ドラマの制作に専念しました。当時は20代女性向けの恋愛ドラマに注力する局はほとんどなく、フジテレビがドラマ戦線に食い込む機会がこの作品だけでした。

オープニングタイトルでは、渋谷のスペイン坂や公園通りで巨大なビリヤード球が陣内孝則を追いかけ回すユニークな合成映像が使用され、音楽には久保田利伸の「You were mine」が使用されました。この曲は、ソウルとファンクのテイストを持ち、当時としては斬新でトレンディなダンスナンバーでした。

全12回の平均視聴率は17.4%、最終回の視聴率は21.4%を記録し、翌年の1989年に高校を舞台に設定を変更し、陣内孝則と柳葉敏郎が再び出演した「愛しあってるかい!」が制作されました。三上博史のテレビや映画出演が増えたため、彼は降板し、キャラクターが似ているBARBEE BOYSの近藤敦とトリオを組み、ヒロインは小泉今日子に交代しました。