炎之料理人

戦争の終結を迎えた横浜の南京町。ここは、掘立小屋のような家が並ぶ中国人の街並みが広がる場所だ。日本人の兵士たちが、中国人経営の中華料理店に押し入ってきた。いつも料理を作っていた店主が風邪をひいて倒れていたため、「今日は料理が作れない」と言ったにもかかわらず、兵士たちは納得しなかった。

その時、外から戻ってきた周が、自分の父親が作っていたチャーハンを思い出し、自分で作ることにした。周の父親もまた、この戦争で命を落としていた。父親は伝説の料理人であり、その技は深く心に残っていた。

周が作ったチャーハンは、兵士たちを感動させ、その話がたちまち街に広まった。店は大繁盛したが、周はチャーハンを一度だけ作っただけで、同じものを再び作ることはできなかった。客たちは怒って帰っていった。

そんな中、周の父親を良く知る男、周の学校の先輩でもあるヤンが現れ、鍋を貸してくれと急き立ててチャーハンを作った。その味は非常に美味しく、周は大きなショックを受けた。

その頃、食べ物は不足しており、違法の闇物資で生活を支えていた。友人の孫もまた、横浜に自分のビルを建てる夢を持っていた。

カニを捕るために横浜の海に飛び込んだ周は、手にカニをいっぱい持ち帰り、友人に食べさせた。友人の妹、ちえはそのカニを見て、譲ってほしいと頼んだが、周が家に案内する途中で手下に阻止された。

カニは店で大評判となったが、すぐに新しい中華料理店が開業し、ライバルのヤンが料理人として働いていた。周は「料理は人を幸せにする」と信じているが、ヤンは周に対してライバル心を抱いていた。

ヤンに「すでに蒸したカニは当たり前だ」と言われた周はまたもショックを受け、落ち込んだ。しかし、メイラン（ひなの）は「周くんの料理が一人でも好きだと言ってくれればそれで良いのでは？」と励ました。

周は「一人の人間よりも100人においしいと言ってもらいたい」と反発したが、ある日、お店が立ち退きを強制されることになった。石倉産業というヤクザが、街の再開発を行い、周の店も壊された。

ヤンの店は、石倉産業に買い取られたが、ヤンは石倉に日本人が嫌いだと言った。なぜ料理を作るのかと聞かれた時、「日本人がおいしいと言わせる「服従の料理」を作りたいからだ」と答えた。

落ち込む周をメイランが探しに行ったが、手下が現れ、メイランに怪我を負わせた。周が戻ってきたとき、仲間が包丁は料理を作る道具だと諭し、周は敵地へ乗り込もうとする気持ちを抑えた。

仲間のコウが作った水餃子はとても美味しく、石倉の病弱な妹、ちえは兄に中国人をいじめることをやめるよう頼んだが、聞き入れられなかった。

石倉が立ち退かせるために孫を使うことにし、大金を渡して火を付けるよう指示した。孫は火を付けたが、石倉が金を渡して火を付けさせたとバレる前に、周に助けられる。

石倉の元に周が一人で乗り込むと、「復興は自分たちでやる。料理で復興してみせる」と言った。

その頃、孫は石倉の手下と対決していたが、警察が乗り込んできて手下は一網打尽にされた。石倉が家に帰ると、妹ちえが血を吐いて倒れていた。ちえは昔食べた周の店の包子を食べたいと言った。

石倉の店の料理人が、ちえのために包子を作るよう頼んだが、周は最初は断った。しかし、ちえがもう長くないことを知った周は試みることにした。

ヤンは周より美味しい包子を作ったが、周は父の味を思い出しながら作り続け、何度も失敗した。しかし、ヤンがアドバイスを送ると、見事に完成した。

石倉達が包子を試食し、全員が美味しいと絶賛した。次に周の包子を食べると、昔の味を思い出した石倉は、この街から手を引くと決めた。

周は料理人として歩むことを決意した。