桥之雨

1996年夏初、江坂衣津子（天海祐希）は浅草の和服店の従業員として日々を過ごしていた。その日、衣津子が仕事を終え帰宅しようとする中、店の養子である松井豊（阿部寛）が京都での修行を終え、帰郷した。豊は衣津子を呼び止め、「午後6時には吾妻橋の畔で待っていてほしい」と告げ、プロポーズの計画を明かした。

夕暮れの橋畔で待つ衣津子は、瀬田雄次（緒形拳）の思い出にふと触れた。その時、雨が徐々に衣津子の肩を濡らし始めた。

7年前の1989年、衣津子がOLとして働く25歳の誕生日に、居酒屋でパーティーが催されていた。その夜、ヤクザの吾郎（金山一彦）がチンピラの男たちに追われて突然飛び込んできた。吾郎の兄貴分である雄次が現れ、チンピラたちを追い払った。雄次は衣津子の手に付いたケーキのクリームをハンカチで拭い去った。

翌日、雄次が衣津子のアルバイト先のカフェに「お詫び」の気持ちを込めてかすみ草の花束を持って訪れた。カフェの主人は「あんな男と関わるな、それは殺人者だ」と忠告した。数日後、街で衣津子を見つけた雄次が彼女を追いかけ、亡き母の墓参りを一緒にしたことで、二人の関係が始まった。しかし、衣津子の父・忠行（中村嘉葎雄）はそのことを知り、強く反対した。

しかし、忠行がダム工事現場で突然の事故で亡くなると、悲しみに沈んだ衣津子が葬儀の夜、雄次のアパートを訪れた。その夜、衣津子は雄次に深い愛情を込めて抱きつき、「今夜泊めてほしい」と懇願したが、雄次は断りを入れた。しかし、衣津子の執念に屈し、二人は別々の部屋で一夜を明かした。

翌朝、雄次は自分の背中の刺青を見せて衣津子に告げ、「私たちの住む世界は違う。もう二度と来ないように」と言った。

しかし、衣津子は雄次と一緒に生きる決意を固め、自らも刺青を入れ、雄次に「吾妻橋で待っている」と電話をかけた。しかし、その直後、雄次はヤクザの抗争に巻き込まれてしまい…。