安达卢西亚的彩虹

NHKの代表作品として、1960年代から1980年代にかけ、海外のコンクールで数々の賞を手にした佐々木昭一郎監督の演劇作品、『川』三部作の第二作「スペイン編」が注目されています。ラジオドラマの出身者である佐々木氏の作品は、音の選びにこだわる独自の世界観や、ロケーション地で一般の人々に演技を依頼し、ドキュメンタリースタイルで撮影する手法が特徴で、多くの映画監督やドラマプロデューサーに大きな影響を与えました。

ピアノ調律師の栄子（演者：中尾幸世）が、アンダルシア地方のグアダルキビル川の人々と出会い、一夏を過ごす物語です。この女性主人公、栄子は、どのシーンでも人々の普遍的な魂に直結しています。鍛冶師のペペ、洞穴探検の達人マヌエル、数学を嫌う少年ホアン、フラメンコダンサーのピーリー、ギター職人アルファンソなど、彼らの姿が描かれます。白と赤の鮮やかな色彩で表現された美しさ。赤いトマトの色が持つ鮮やかさは、文明に対する激しい批判を象徴しています。市場ではジプシーの人々のものが売られ、その声が響きます。抑圧された感情が重なった表現から、生活の奥深いニュアンスが浮かび上がります。

ギター職人アルフォンソは「ずっと働いて苦しかった。でも出会えてうれしい」と語ります。栄子の涙は、まるで悠久のグアダルキビル川の流れのように、一瞬の交流でも同じ世界の苦しみを感じさせるものです。彼女と共にその苦しみを共有できる心が、人間の条件なのだと思えます。少年ホアンは栄子の自転車を新品同様に修理します。ホアンの若い人生に刻まれた自転車のエピソードは、心からの贈り物を象徴しているかもしれません。

栄子の「優しさ」やアンダルシア地方の人々の表情は、現代の傷ついた世界に対する反対の核心を表していると言えます。

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